はちみつレモンCのど飴
「はちみつレモンCのど飴」
コンコン、と咳き込む声が耳に残っている。涼を求めてコンビニにいた私は、お菓子コーナーへすぐさま向かい、のど飴を見回した。
「これこれ」
それは、喉がいがらっぽいと買うのど飴。袋入りだとたくさんありすぎて、喉が治った後も残ってしまう。でも、スティックタイプならいつもちょうど良い個数だ。値段も手頃で、百円ちょっと。これ、ネーミングにはちみつでレモンという喉には最強のタッグが組まれていて心強い。ビタミンCが風邪をやっつけてくれそうだ。
レジに向かって買うと、すぐにリュックの背にしまい込んだ。
コンコン
公園から帰ってきた子どもが、突然、咳き込んだ。
「いいものがあるのよ」
リュックの背からのど飴を取り出すと、急いで子どもに手渡す。
「あれえ、のど、いがいが、なおった」
小さな包みを開けてなめると、子どもは嬉しそうに言った。
「おいしいね」
「でしょう」
一緒になめてみる。優しい甘みが口いっぱいに広がる。ほっこりした気分になる。「お母さんも、のどがいがいがしたら、のど飴さんのお世話になるのよ」
そう言った次の瞬間、私はあーっと心の中で大きくさけんだ。
写真、撮るのを忘れた。
「どしたの?おかさん」
「なんでもないの」
というわけで、写真ののど飴は包みが開いて、二つ減っているというわけなのである。
いつもはどこのお店に入っても、存在すら忘れているのど飴。でも、必ず一年に何度かはきらきらと輝き、ありがたいお菓子となって、私の目の前に現れるのだ。