マルカワの「フーセンガム」
オレンジやイチゴの絵の四角い箱は、まるで宝石箱のようだ。箱を振ると、からからと音がする。開けると、なんと、そこから四つもの丸いガムが出てくる。これで十円。これなら、四人の友達とシェアすることだって可能だ。コストパフォーマンスの良さに、私は幼い頃からいくつ、その箱を買い求めただろう。
でも、このガムは、その名前に反して、一つ食べたところでフーセンガムにはならない。時々、器用な友達が、小さなふーせんを作ることはあったけれど、私ときたら、からきしだめだった。ひと箱すべて食べてもなかなかふーせんに出来ないわたしは、もうひと箱買い求めることもあった。
この前、久しぶりに、スーパーでまるかわのフーセンガムを見つけた。いい大人が駄菓子屋にいくのは恥ずかしいけれど、スーパーならキャベツと牛乳の間に忍び込ませたらいい。それは、オレンジ、イチゴ、ぶとうの三つの箱のセットになっている。どきどきしながら、イチゴの箱を手にする。ん?なんか、箱が昔より小さくなったような?続く中身のガムの玉も、手のひらの上で、まるで点のように小さい。
いや、私が大きくなったのかも知れない。何十年ぶりに歩いた昔の路地も、昔そのまま変わっていないはずなのに、小さく感じたっけ。
小さなガムを口にしてふーせんをつくろうとしたけれど、やっぱり昔と同じように、不器用な私には作れなかった。でも、昔と同じイチゴ味が、口いっぱいに広がった。